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「……ごめん」
三文字。
その三文字で、オレは一体どれだけのものを傷つけたのだろう。
確実に言えるのは、二つ。
オレが傷つけたものは、一つだけじゃないということ。オレが傷つけたものは、本当は傷つけたくなかったはずのものだということ。
「葛西のことは好きだけど、その……"そういう"好きとは違うと言うか……」
ダメだ。どんな言葉を使おうと、残酷な結末は変わらない。
こんなに優しくて、純粋で、一途に想ってくれる女の子を、傷つけることしかできない自分が、恨めしくて怖かった。
それでも言わなければならない。オレの口で、オレの声で、意思を示さなければならない。
葛西はもう、自分の口と自分の声で、意思表示したのだから。
「……葛西とは友達として仲良くしたい、っていうのが、オレの答え」
かすかに吹く風に乗った返事は、槍のように彼女を貫いたことだろう。
「そう……」
ポツリと、小さな呟き。
それまでオレを見つめていた葛西は、一転して顔を伏せている。表情は窺えない。
漂う沈黙の中、オレの心拍数は密かに上がっていく。
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