6.聖夜にて 後

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しばらく横たわった静寂は、 「……ありがとう」 (少なくともオレにとっては)意外すぎる言葉で破られた。 見開かれるオレの目には、顔を上げた葛西の、朗らかな微笑が映る。 「ホント言うとね、返事はまた今度にした方が良かったんじゃないか、って思ったの。 急にこんなこと言われて、神崎君も困っちゃったと思うから」 「……」 「ちゃんと答えてくれてありがとう。私はそれだけで……」 「やめてくれ」 妙に早口な彼女の言葉を、努めて低い声色で遮る。 うぬぼれていいなら……それが葛西のためだ。 「ッ……」 繋いでいた言葉を飲み込む葛西は、先刻までの笑顔を失い、消沈していた。 が、表情の根っこは変わらない。彼女はもともと素直な子だから、瞳を注視すれば、それくらい誰でも分かる。 (さっきも、今も……) 目が、泣きそうなのだ。 涙が溜まってるとか、そういう意味じゃない。暗くて深い情念の塊が、濃い紫の果てに確かに見える。 そんな……"泣きたい"以外の感情も複雑に混ざった目で、無理に笑わないでほしい。 そんなの、オレが知る葛西の笑顔じゃない。
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