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……それでも、
「ゾリスさんに、よろしく頼まれた」
冷たい風に毛先を踊らせながら、切り出した。
「ユーリのことを頼むって、言われた」
病室のベッドで、どこか切なげな目をしていたゾリスさんを思い出す。
思えば、彼はあの時すでに、自分の中に潜むメシアに勘づいていたんじゃないだろうか。
だから、あんなことを言って、あんな目をして、
『それなら安心だ』
あんな呟きを、漏らしたんじゃないだろうか。
「ゾリスさんの最後の頼み、無視するわけにはいかねぇだろ」
だから、ダメだ。
三人一緒に動き、ユーリまで死なせるなんて、絶対にやっちゃいけないんだ。
『……』
しばらく固まっていたオセは、口を開くこともなく、そっと両腕を差し出した。
顔も上げないままの動作は、探偵の名推理に観念し、自首を決意した犯人を思わせる。
オレも何も言わず、ユーリの細い体を、所々が赤く汚れた腕へ横たえた。
オレの腹に触れていたせいだろう。彼女の制服の左腕には、血がべっとりと貼りついている。
今度は右腕も、オセの腹に接したことで汚れた。何か申し訳ない。
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