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「……ふっ」
思わずこぼれた笑みは、何だろう。
とりあえず、オレが馬鹿だということには同意だから、それに関する苦笑かもしれない。
まあ、今さらそんなこと考えても仕方ないわけで。頭を切り替えて振り向く。
そして。
大気を焼きながら迫ってきた、黒い炎の塊を避けた。
背後で禍々しい爆発が炸裂する。たまらず爆風に身をあおられ、凍てつく地面に手をついた。
咳き込みながら顔を上げた先には、
「フェルムは昔、頻繁に"胸くそ悪い"という語を使っていた」
深い冬の寒空を背負い、こちらを隻眼で睨む、黒衣の男。
闇夜から生まれたような錯覚を抱いてしまう、万物の"死"──タナトスだ。
「そのたびに汚いと注意したものだが……なるほど。これは確かに、胸に馬糞を詰め込まれたような気分だ」
すでに血も止まった左目は、しかし光を失っている。乾いて頬に貼りつく血が、まるで涙みたいだ。
反対に、右目の輝きは激しい。険しいとか厳しいとか、そういう次元を超えた力が、そこにはあった。
たった一つになっても、意志が弱まるどころか強まった眼差しを放ち、言う。
「私は貴様が胸くそ悪いぞ、人間」
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