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地面を滑って止まった先で、ようやく痛みが追いついた。
「ぅ、ぐ……!」
足から駆け上がってきた悲鳴を、無理やり腹の中に留める。身が縮むような思いだ。
貫かれた右足が、意思に反して細かく痙攣しているのが分かる。
意識が逃げていきそうだったが、我ながら感心してしまうスピードで体を起こし、再び痩身を視界に捉えた。
焦る様子もなく、悠然と歩み寄ってくる姿は、ただひたすら禍々しい。
「貴様ら人間が──羽虫にも劣る下等生物がどう生きようと、それは貴様らの勝手だ」
夜をその身に纏ったように、冷たく吹きすさぶ風に翻る衣は、黒。
「しかし、貴様らの生命活動は全て、私にとっては邪魔で目障りでしかない」
全てを斬り薙ぐ刃のように、跳ね返した月光で空気を裂く髪は、金。
「その上、計画を乱されたとあっては、私でも子供じみた怒りを抱かずにはいられない」
煉獄に猛る業火のように、憎悪と嫌悪に燃え盛る瞳は、紅。
「よって……前言撤回だ」
計三色で、並々ならぬ殺気と覇気を露にし、"死"が死を宣告する。
「最期は、苦しみながら逝かせてやろう」
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