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未来を閉ざす、一言。
しかし、それを聞いてもオレの心には波が立たない。さっきまでの恐怖が嘘のように落ち着いている。
ゆっくり立ち上がると、右足から血が溢れた。水たまりに足を突っ込んだような、でもそれにしては生暖かい感触が、気味悪くまとわりつく。
「……【ソード】」
中身がほとんど詰まっていない、張りぼてに等しい刃を具現する。
黄金色の光が、心なしか弱い。それでも懸命に輝き、普段と変わらぬ姿を保とうとしていた。
得物を眺める内、それを握る、一直線に傷を負った右手の甲が目に入る。
「……」
ごめんな、と。
心の中だけで謝罪し、柄を両手で掴んだ。改めて敵を見据える。
微塵も揺るがず、毛ほども迷わず。夜空の下でじっと塞がる立ち姿は、まさしく壁。
生物が決して乗り越えられない、死そのもの。
「苦しめ」
<メメント=モリ>に、赤を弾けさせる黒雷を這わせ、
「そのついでに、死ね」
死神は、地を蹴った。
対するオレは、返事をしないまま剣を構え、迎え撃っていなす体勢を作る。
「……」
どういうわけか、まだ怖くない。
何というか
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