8.血の接吻

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──── 一太刀目を浴びてから、どれだけ経っただろう。気絶しては目を覚ます、それを何回繰り返しただろう。 何度目かの覚醒の時、オレは膝をついていた。 両手を力なくぶら下げ、正座する形。体の随所で跳ねる黒い稲妻が、滴る鮮血を弾き飛ばす。 感覚も失せた体は、吹きつける風の冷たさだけを、明確に脳に伝えるばかりだ。 痛みは、届けない。 「……」 かすむ視界が軽く揺れる。髪を掴まれ、顔を上げさせられたようだ。顔らしいものが見える。 ぼやけてはいるが、あのおぞましく鮮やかな赤は、彼の目に違いない。 しばらくその状態が続いた後、オレのか細い呼吸に混じり、吹雪すら凍らせるような冷たい声が、鼓膜を氷漬けにする。 「何か、言い残すことはあるか」 お約束といえばお約束の──敵の最期に投げかける質問。 終わりを本格的に悟って、まだオレの心は平坦だ。止めどなく溢れる切なさに揺れ、他の感情が入り込む余地がない。 (なあ、タナトス) 心の続きは、声に。 「……お前……」 乾いた喉を裂き、かすれた呼気が言葉になる。
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