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でも。
命を幾万と奪った、その果てにある幸せなんて、無意味だ。
顔も知らない誰かまで泣かせなきゃ得られない幸せなんて、無価値だ。
大事な人と分け合えない幸せなんて、無慈悲だ。
所詮は幸せに生かしてもらえた人間の、都合の良い綺麗事なのかもしれないけれど、オレは嘘偽りなくそう思う。
だからさ、タナトス。
「オレは……御免だよ」
静寂。暗闇。
木の葉がそよぐ音さえ聞こえない完全な無音。月が雲に隠れた深い宵闇。
それら全てを裂くように弾けて唸る、漆黒の神力が見えたのを最後に。
オレの視界は、急に黒一色に染まってしまった。
……やれやれ。
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