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腹と口から赤を滴らせ、オセが闇夜を駆け抜ける。
四つ足の彼の背には、上着の裾を風にはためかせる、一人の男性がいた。
目を険しく輝かせる、右京 太助である。
天の川を凝縮したような眼光は、オセの体を走るたてがみと共に、冬の森を鋭く斬る。
『そろそろ、結界だ』
「何でもいい。早く行け」
声が素っ気なくなるのを抑えられない。見据えた先にあるものを、懸命に見定めようと気を張る。
今から向かう先にいるのは、全メシア中、最も恐れられていた一体なのだ。手も気も抜けない。
その上、鋼介の命まで懸かっているのだから、なおさら目に力が宿った。
(間に合ってくれよッ……!)
祈りとも怒号ともつかない叫びを心に響かせ、歯を食い縛る。
その直後、大きな音が夜風を吹き散らした。
『ぐぁ……!』
身悶えるオセ。額を結界に打ち付けてしまったらしい。出るのは楽だが、入るのは容易ではないようだ。
「ちょっとどいてろ」
落ち葉も朽ちた地面に降りた右京は、想定外の追撃を受けた豹に、固い声で指示する。
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