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右京は口を閉ざす。言いたいことは山ほどあるというのに、混乱する脳は声帯を動かせない。
しかし、沈黙は短かった。
「スパイルの契約者か」
重く、雷鳴を思わせる声が響く。
目の前の彼のものだが、右京は、まるで夜空そのものに語りかけられているような心地がした。
「フェルムだけでなくスパイルまで、この調子で行けばクロノスもか……」
上級貴族の最年少当主として名を馳せた彼の目に──否、名を馳せた彼を支配する"死"の目に、あからさまな侮蔑が混じる。
「嘆かわしいことこの上ないな。揃いも揃って二条院の飼い犬に成り下がるとは」
「……お前」
呆れ果てた吐息には返さず、ようやく唇を動かした。
思っていたより、穏やかな声だった。
「誰だ」
「既知の解を求めるか……そう愚劣だと、ただ生きるのも難儀だろう」
片目を失った苦痛の片鱗すら見せず、敢然と立って名乗りを上げる。
「究極生命創造計画・第八世代被験体。『死滅』と『終焉』を司る"死"のメシア、タナトス」
右目が撃つ眼差しは、紅よりもなお赤く、鮮やかに。
「これからは、貴様ら人類の死神だ」
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