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彼の正体については、既にオセから聞いていたため、今さら驚きはしない。
ただ、彼の言葉にあった小さな突起が、意識の隅に引っかかった。
「"これからは"ってのは……どういう意味だ?」
その答えも、分かっている。常日頃の態度からは想像もつかないが、右京は桜峰を主席で卒業したのだ。
それでも尋ねたのは、どうしても認めたくなかったから。
受け入れるより突きつけられる形で、現実を自己の内へ取り込みたかったから。
はたして、死神を自称した男は右京の内面を察し、哀れむような目を見せた。
だからといって、
「先程まで、私は神崎 鋼介ただ一人の死神だったのでな。奴を殺した今からは、人類全ての敵になろうと考えた次第だ」
彼は、突きつけることに容赦しないのだけれど。
槍のような返答を受けた右京は、動かない。両手を脱力させたまま固まる。
うつむく両目には、薄い月明かりに白ける地面と、宙を素早く漂う紅黒の稲妻だけが映っている。
今回の沈黙は、先程のそれより長く続き、
「しかし、赤の他人を逃がして死を選ぶとは……下等生物なりに、なかなか滑稽で楽しめたぞ」
タナトスが、まったく笑っていない嘲笑を放ったことで、終わりを迎えた。
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