8.血の接吻

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金属同士が衝突する、豪快な音が響き渡る。 白黒一対の牙は、黒衣に包まれたタナトスの身に噛みつく前に、漆黒の両刃剣に阻まれた。 獣の上アゴを象る峰も、本物の野獣のような光を、目を表す玉石に宿す。 「……笑うな……」 「私の聴力は、ハエの声が聞こえるほど優秀ではないのだが」 怒り以外何も含んでいない唸りに、しかし余裕の挑発が返される。 対して、右京は余裕も平静も失った。 「テメェが……あいつを何も知らないテメェがッ……!」 黒々とした稲妻を纏い、跳ねさせる体が、右半身に紋様を浮かび上がらせる。 直後に上がる顔の中で、双眸が鋭利な真紅を羽織った。 「あいつを笑うんじゃねぇ!」 咆哮し、一閃。 原子の結合をも断ってしまいそうな斬撃が、タナトスを一気に後退させる。 彼我の距離は数メートル。互いにスパイルの限定空間の中にあるため、積極的に距離を詰めようとはしない。 このまま右手を軽く差し出せば、それだけで心臓を貫くことができる。 「くたばれ、死神!」 吠え、目の前の空間と、タナトスの左胸の辺りを『調和』させた。
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