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12月25日。クリスマス。
昨日に引き続き、猛烈な寒さが列島を包み込んでいる。
明け方から再び雲に覆われた空は、分厚い灰色の衣を羽織っているかのようだ。日光をほとんど地表にもたらさない。
まるでこの部屋のようだと、木宮は感じた。
天候のせいで部屋が暗いから、というだけではない。音が一切ない室内には、暗鬱とした空気が充満している。
暖房が入っているはずなのに、妙に寒気がするのは、恐らくこの雰囲気のせいだろう。
(無理もないが……)
思いながら、背後の窓を見やる。中庭に植えられた細い木が、冷たい風に震えている。
彼がいるのは、桜峰魔術師学園。普段めったに生徒が訪れない、北校舎二階の会議室だ。
彼らの他に生徒はいない。終業式の翌日にあたる今日は、冬休み初日だからである。
もし、昨夜"あんなこと"がなかったら、自分は今頃何をしていたのか。
そんなことを考えつつ、既に何度も見た同席者たちの様子を、もう一度眺める。
複数の長机が四角く並べられた室内には、木宮を含めて五人の少年少女の姿がある。
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