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しかし、負傷らしい負傷は見当たらない。精神的疲労は相当のようだが、体は至って健康そうだ。
(戦わなかった……のか?)
勘繰る木宮の脳裏に、昨夜の出来事が去来する。
あの夜、第二寮棟にはこの場の全員に加え、時音や理事長など、メシアを知る人間が集結していた。
(特に宍戸が居合わせたことが)奇遇だ何だと雑談し、日付が変わる直前になった頃。
昏睡状態のユーリを抱えたオセは、突如として来訪した。
彼は腹に重傷を負っていたが、鬼気迫る形相で右京への面会を求め、早口にまくし立てた。
鋼介の現状に、居場所。そして、全員の度肝を抜く一つの名前を。
潰れていた時音も、瞬く間に酔いを吹き飛ばして対応しようとした矢先、
『お前らはハディスを頼む』
そう言った右京は、周りの制止も聞かずオセに跨がり、鋼介の元へ行ってしまった。
理事長や時音と共に、ユーリの保護に徹していた彼らは、その後の経緯を何も知らない。
故に、全員一睡もしていないにもかかわらず、朝早くに一人も欠けることなく集合したのだが、
「……」
少なくとも木宮は、紫煙をくゆらせる担任が何を見たのか、現在の様子から予想できてしまった。
他の面々も同じなのかどうかは定かではないが、情報開示を急かす者はいない。
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