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「まあ、本題って程でもないか……あいつだ、分かるだろう?うちにも結構情報が流れて来ててな、最近だと山篭もりして魔獣どもを飼い馴らしてるって噂もあったなあ」
前に、とある山道で銀髪に会った事を思い出した。そして、その時僕の手首には鎖が無かった事も。鎖に視線を落とし、またヴァリアスへ戻す。待っていたのか、ヴァリアスは目が合うと頷いてまた話し始めた。
「そうだ、忘れていたがその前に知りたいのは、だ。ただ一つ。お前は――」
ヴァリアスが言葉を切る。そしてしばしうつむいて、再び顔を上げた。強い、意志の籠った眼だった。それでいて、僕はそこから怯えを感じた。
「――何故ここに、一人でいる?」
それで、僕はヴァリアスとかつての友の、オパートスとの関係に気づいた。最早、銀髪は問題ではなかった。僕が残した罪が、ようやく姿を表したのだ。オパートスは、僕の最初で最後の友であり、そして宿敵だった。
「……一人に、なったからさ。それで本題の方は?」
僕が言ったのは、それだけだった。僕に分かっているのも、それだけなのだ。ヴァリアスは、ただ沈黙している。『本題』を切り出す様子もなかった。
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