深夜の逃走劇

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ヴァリアスは、やはり強かった。魔の発現も見切れなかったのは、この二年間で、オパートスと別れてから始めての事だ。なんとか立ち上がった。景色が回って見える。軽い脳震盪でも起こしたのか。 連中の銃から魔の『臭い』を感じた僕は、無理矢理足に力を込めて飛び込んだ。懐かしい臭いだ。二年間、ほとんど感じていない。肩に鋭い痛み。掠っただけだ。ヴァリアスの魔。今度こそ、見切った。軽く呟く。 『レアチェ・ホーン』 魔を放つ気配で感じる。立ち止まる。勢いで鎖を振り抜いた。風が僕の体を打つ。立っていた。僕の前には、両手から伸びた鎖が壁を形成している。 鎖は格子がひし形の、東方の障子のような形に伸びている。魔が障子紙の役割を果たして、魔の風を防いだのだ。僕が念じると鎖は手首に戻り、魔は消えた。走り出す。もう景色は回っていない。僕はヴァリアスと、そして自分の笑みに気付いた。 楽しいのだ、と魔弾を避けて気付いた。オパートスが居なくなってから、こんな事は無かった。そして、これまでヴァリアスと、どんな形であれ戦った事は無い。 一人がナイフで切り掛かってきた。鎖を巻いた手首で受け止め、蹴り飛ばし、すぐに前に転がる。魔弾が掠め、服が裂ける。 ヴァリアスの魔は、再び『レアチェ・ホーン』で防ぐ。ヴァリアスはもうすぐそこに居た。窓もだ。 勢いをつけて飛ぶ。魔弾やナイフの飛来を感じた。
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