深夜の逃走劇

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ヴァリアスの、上を越えようとした。彼は椅子に座っている。黒々としていた髭は、大分白くなっている。 「お前は、変に堅いな。仲間でいたかった」 変に寂しげな声で笑いながら、葉巻をくわえるのが飛び越える瞬間垣間見えた。そして僕は最後の『鍵』を呟いた。ナイフや魔弾は、正確無比に僕を狙っている。ヴァリアスに向かう事は無いだろう。 『プラード・サベーン』 発現するは、透き通った壁。僕の背中側に現れた。防げるのは一回だけ。だがそれで十分。 鎖で窓を叩き割り、飛んだ。三階くらいか。行ける。その瞬間、僕の右肩に痛みが走った。体制が崩れる。ヴァリアスが何かしたとは思えない。 落ちて行った。遠い。まだなのか。衝撃。自然と受け身を取っていた。体は動かない。すぐにヴァリアスの手下が来るだろう。動かなければ、またご対面だ。いや、殺されるか。 立った。銃弾が掠ったのと同じ所に、ナイフが刺さっている。抜いて、服を引きちぎって止血した。歩きながらだ。毒は無いようだ。使うなら即効性だろう。 宿屋に転がり込んだ。空いている。そこまでは追われないという確信があった。 主人も奥さんも、何も聞かなかった。奥さんが心配そうな視線を向けて来ただけだ。 僕は部屋に入り、すぐに寝た。何の夢も見ないだろう。
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