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とりあえず、それは人だった。
ただ、その色素が抜けた銀の髪は何かの残骸のようで、微笑みを浮かべた顔もこの世には無い物のようで。
風も無いのに短い髪がゆらゆらと、頼りなく揺れていた。
しかし、黒い眼だけは強烈な意思を放ち、何か曖昧な物を捉えんとしていたのだ。
とにかく、それは身を屈めて言った。
「こんにちは、『―――』」
何か特別な意味があるような、適当に組み合わせただけのような三文字。それに何か感じた訳でもなく、何の反応をした訳でもなかった。何と言う三文字だったかは、覚えていない。
しかしそれは小さく笑った。心からの笑みと自然と思えるような、そんな不思議な笑顔。そして更にこう続けた。
「ああ、貴女はいつまでも変わらない。人が死に機械が錆びても、人が老い機械が止まっても。それはやはり、喜ばしい事でしょうね」
それを聞いた時身体の何かが疼いた。何かは否定の叫びを挙げるかのように一瞬、ほんの一瞬暴れて、すぐに静かになった。
「一人で延々と喋るというのも芸が無い。そろそろ始めましょうか」
何かが雄叫びを挙げる。何かを表面に出す術は無く、ただそれをじっと見た。
劇か何かのように、それが言おうとする。
「さあ、
視界が白く――
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