静かな予兆

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僕はシャギュアを歩いた。たまに本屋などに入り、そしてちょっとした物を買ってはぶらぶらと歩く。旅先でよくやる事だ。 シャギュアはさほど活気がある訳でもないが、道行く人の顔は明るい。ただし、僕の手の鎖には見て見ぬふりをしているようだ。 「やあ、お久しぶり」 気付かなかった。隣に並んで歩いている男が居る。視界の端で、銀色の髪がたなびいていた。僕は無理なく自然に無視した。 「……その無視の仕方はどうなんだい?」 「どうなのって、無視された方も勘違いだと思える最高の無視じゃないの?」 「そんな鎖付けてるのは君一人で十分だよ」 「うん、じゃあね」 僕はそれだけ言って、歩調を早めた。彼はそれで去るだろう。 「さようなら、名無し君。囚われた野獣には気をつけたまえ。」 銀髪は、意味ありげな事を言い、始めから居なかったかのように消えた。僕は、彼に名前を名乗っていなかった事に気が付いた。彼なりの意趣返しだろう。 僕は立ち止まり空を見上げた。大分時間を潰したので、陽は沈みかかっている。何人かが僕を見ていたが、僕が歩き出すと、ほとんどが興味を無くしたように視線を戻した。僕と目を合わせるのが嫌だったのかもしれない。 僕はまたぶらりと、しかし今度は明確な目的地に向け歩きだした。そろそろ宿屋で早い夕食になるはずだ。
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