10人が本棚に入れています
本棚に追加
シャギュアで採れる山菜の郷土料理を味わった後、僕は部屋に帰り、ただぼーっとベッドに転がって天井を眺めていた。
天井を眺めていると眠くなり、僕はうとうとと眠り始めた。けれどどこか落ち着かず、僕の意識のいくばくかが周りの気配に気を配っていた。
不意にドアがノックされた。僕が起きてドアを開くと、そこにはスーツを着込んだ男が立っていた。僕が口を開こうとすると、被せるように言い始めた。驚く程の無表情だ。そして、彼の言葉にはどこか脅しめいた響きがある。
「夜分に申し訳ありませんが、少しお越し願えますか?」
「いいけど、何故だい?そしてどこへだい?」
僕が壁によりかかりながら言うと、男は無表情ながらほんの一瞬、見取れない程僅かに顔をしかめた。礼儀にうるさいのかもしれない。
「昼間、『彼』と貴方が話していらしたので。そこに着けば分かるでしょう」
それを聞いて心の中で苦笑する。彼、つまり銀髪が他人に分かるように僕と話すのは、悪戯以外にありえない。銀髪には周りの人々の認識を阻害するのも簡単なはずだった。
「やれやれ、あいつもやってくれる……まあいいさ、行こう」
「……ご協力、感謝します」
僕は荷物を持ち、彼について行った。受付で主人はただ視線を投げかけ、奥さんは心配そうにしていた。
僕は目的に近付いているのに気付き、そして銀髪の意図を若干悟った。あくまで若干、だ。
最初のコメントを投稿しよう!