拾いまして。

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同時刻・境内にて。 境内の中で掃き掃除をしてる女性の姿がある。境内にはあまりゴミはないのだが、日課という事で掃除をしている。 女性は、寺の近くの道を通る人が居れば微笑みながら挨拶を掛け、とても礼儀正しく思える雰囲気を漂わせている。 「ふぅ…境内の掃き掃除はこれぐらいでいいかしら。」 女性は呟き、箒を片付けようとしたその時 「聖子おねーちゃーん。ただいまー」 と、聞き慣れた声がした。 周囲を見渡すと、山の方から辰巳の姿が見えた。 「またこんなに汚して…」 聖子がいつもの言葉を言うと、辰巳もいつも通りに笑って誤魔化す。これが普段ならこの様になるのだが、今回は事情が違うらしい。辰巳が何時にもなく真剣な表情と声色で 「この子…、気を失っているみたいだから手当てがしたいの。姉さんも手伝ってもらえない?」 と、言い出してきた辰巳の背中には確かに少女らしきものがあった。 それを聞いた聖子は何かを察したらしく、仕方なさそうな表情で少女を背負った辰巳と共に家に戻り、手当てをする事にした。 2人は手当ての為に少女の着ているものを脱がした時に、思わず視線を逸らしたくなる様な光景が飛び込んだ。 全身に巻かれた包帯、所々に痣や傷痕があったのである。 まだ10歳前後に見える少女。 一体何があったのか、手当てを終えた2人はそれを考えつつも他にやらねばならない事があるため、少女を寝かせて部屋を出た。
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