時は文久、追われる世なり。

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  箒を手に掃除を再開しようとした時。 ドカァァァァンンン!! 凄い爆発音と共に、邸の破片を巻き込んだ爆風が童の体を駆け抜けた。 それはもう、体を吹き飛ばすくらいに勢い良く。 パラパラパラ… 邸の破片が灰となり、降り注ぐ。 反射的に瞑った目をゆっくりと開けた童の顔は、先程までの穏やかなものではなく、それは般若の如く恐ろしいものだった。 「ひぃさぁーすぅけぇぇぇぇっ!!」 箒を投げ捨て、童は叫びながら爆破した邸の中に飛び込んだ。 ――――…… 童は一角離れた場所にある部屋に、ゆらりと足を踏み入れる。 煙が幕を張っていてよく見えないが、奥に人らしき塊が倒れているのを確認することができた。 「ごほっごほっ」 煙を吸って軽く咳き込みながら、少しでも煙を追い出そうと顔の前で手を払う。 目を細めて進み、塊を磨り潰すように踏みつけた。 「ぐえっ」 声が聞こえたような気がするが童は、気のせいだ。と腹の上から足を退かさない。 寧ろ、一層に力を込めた。 「お、桜花…勘弁しちょくれ……」 「何か言ったかな?久介殿」 童は冷たい目で塊。否、倒れている男を見下ろした。
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