『夜中の逃走劇』

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『最近、出るらしいよ?』 2037年、四月十五日。 すっかり日も沈み、時刻は午後九時前。 この春、つい先日市内の高校に入学したばかりの俺。 面倒ではあったけど、それなりに新しい生活に心躍らせている中、クラスでそんな噂が流れていたのを思い出した。 「はぁっ……はぁっ……!!」 まだ高校生にして、既に何年か前から一人暮らしをしているらしい女子、瑠奈。 高一にしてはやけに冷めた視線で物を見る、背の高い男子、日比谷。 その二人と、まず『なんとなく』成り行きで仲良くなった。 それから俺はさらに二人を通して『なんとなく』周りの新入生とも、それなりに打ち解けた。 これから『なんとなく』、普通の高校生活を送りたい、と思っていた。 「シシシシシ……!!」 必死に電灯の少ない夜道を走る俺の後ろから、男の奇妙な笑い声が聞こえてくる。 それと同時に、ジャキン、ジャキン、という金属を擦り合わせるような音。 足は、止めない。 俺、葛西信幸【カサイ ノブユキ】は追われている。
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