―12歳 扉の向こう―

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ぶわ、と涙が溢れた。 慌ててドアを閉める。その乱暴な音で、俺たちとシェリーは完璧に隔たれたことを感じた。 「……あ、ああ……う」 唇を噛みしめても、震えて変な声が木霊した。 シェリーの笑った顔、シェリーの俺を呼ぶ声。 今引き返したら、そこにいるのに―― 俺は振り払うように、ブンブンと勢い良く頭を振った。 涙も廊下に飛んだ。そこだけキラキラ光るのが、妙に視線を捉えた。 でも。 もう一緒に泥だらけになって遊んだシェリーはいない。 シェリービーン・ハンスン。 もう、俺たち孤児とは違うんだ。 その言葉が胸を刺す。 これから別々の人生を歩む。永遠に一緒にはいられないこと。そんなの、バカな俺だって分かってた。 それでも、思い出があるなら。 キラキラと輝く、少年時代。そこに彼女の笑顔があるなら。 そう思っていたのに。 誰より愛しいシェリービーンに、どうして忘れて欲しいだろうか。 それが、シェリーのため。 その事実が、一番悲しかった。
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