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その言葉に、どれだけの愛が籠もっていたのか。
ハンスンさんは分かったんだろう。
喉を詰まらせて、それからしっかりと頷いた。
「だから君たちも、幸せでいなさい。君たちが幸せじゃなかったら、きっとあの子も悲しむ」
くしゃ、と無理やり、今度こそDJも一緒に俺たち2人の頭を撫でて、悲しそうに笑った。
居心地の悪い温かさが、無性に切なかった。
そうして、ハンスンさんは僕らに背を向けた。シェリーの待つプレイルームへと歩いていく。
「アレックス」
DJが腕を引いた。
いや、もう少し――
「アレックス、もう行くんだ」
もう少し、もう一回だけ――
「アレックス!」
――シェリーを見たい。
ハンスンさんが入る、その瞬間だけ開く扉から。
「決めただろ!」
DJは俺の腕を叩くと、そのまま歩き出す。
「DJ――」
「知るか」
DJは振り返らない。
俺は歩き出すが、それでも目はドアから離せなかった。
やがてハンスンさんはドアを開いた。見えたのは、パステルカラーの壁だけだった。
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