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俯くブロンドの少女が、その華奢な肩を震わせた。本来だったら誰をも魅了する笑顔は消え、澄んだグレーの瞳は輝きを失っていた。
途端に、堪えきれなくなったように涙が溢れる。
「嫌……嫌だあ……」
その言葉は、受け取る相手も見つからずに低く落ちた。
少女の目の前にいる2人の少年は、自身の怪我の痛みも忘れてただ突っ立っていた。
茶髪の少年は、こちらもまた泣きそうなほど眉を寄せていた。恐らくは少女の慟哭と、親友との約束に板挟みになって。
プラチナと称してもよいほどの薄い髪色の少年は、彼とは対照的に、シャッターを下ろしてしまったように無表情だった。恐らくは、自責の念と愛しさをひた隠して。
「嫌だよ……嫌だよ……」
少女は繰り返した。何が嫌なのかも分からなくて、ただ泣き叫んだ。
茶髪の少年は、今にも動きそうになる唇を必死に噛んでいた。そのため、その言葉は終ぞ彼女に届くことはない。「お前のせいじゃない」と。
泣き声だけが、語り合う言葉を失った彼らの沈黙を埋めていた。
やがて、プラチナの少年は言った。さも不機嫌そうに。
「シェリー、泣くなよ。」
彼女は弾かれたように顔を上げた。みるみる涙が零れる。
「……っく」
何粒も零れてから、ズレたタイミングで嗚咽が出た。苦しそうに瞳を瞬く。
この時。
彼女がこの少年の胸の内を知っていたなら。
それが悲しみを押し隠す強がりだと分かっただろう。
それでも、幼い彼女には分からなかった。
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