プロローグ ―12歳、別れ―

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少女の瞳が、それでも今までの時間に縋るように少年たちに向けられる。しかし、彼らは目も合わせない。一方は困ったように、もう一方は心底苛ついたように顔を背けていた。 そこにはもう一緒に遊んだ彼らがいないことを唐突に知る。視界が涙で孕んだ。 プラチナの少年は一瞬顔を歪めて、それからためらいもなく部屋を出て行ってしまう。 茶髪の少年は彼の名前を呼びかけたが、すぐに口を閉じた。 通り際に見えた彼の顔が、泣きそうなほど無表情だったから。 目の前の少女が、彼の"拒絶"に激しく泣いているから。 少年はそっと、あえて痛む右腕で少女を抱き寄せた。 その肩にあるのは、少女を守った傷。 それと同時に、少女を闇に突き落とした傷。 ブルブルと震えるのは、痛みと、喩えようのない悲しみ。 少年は歯を食いしばって泣いている。 言えない"さよなら"を、彼の体格より遥かに小さい少女と一緒にしまい込むように――ただ、抱き締めていた。 やがて引き取るように少女を抱き締めた新しい母親に託し、少年も部屋を出た。 それが、10年前の出来事だった。
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