―12歳 扉の向こう―

3/14

43人が本棚に入れています
本棚に追加
/242ページ
傷がじんじんと、ひきつるように痛む。 早く病室に戻りたかった。戻ってモルヒネに身を任せて、何も感じることのない眠りへと落ちたかった。 だけど戻ったら――戻ってしまったら、それはもう取り返しのつかない場所へ行ってしまうようで。 ――今なら、まだ。 俺は未練たらしく、プレイルームの真向かい、レントゲン室の外にあるソファに座った。 プレイルームの穏やかな黄色いドアが、人気のない廊下で唯一息づいている。 今ならまだ、間に合う。 シェリーが飛び出して来たら。 行かないでと泣いたら。 「俺は……」 視界がぼやけた。 瞳を動かさないように、呼吸をそばめてその波が過ぎ去るのを待つ。
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加