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傷がじんじんと、ひきつるように痛む。
早く病室に戻りたかった。戻ってモルヒネに身を任せて、何も感じることのない眠りへと落ちたかった。
だけど戻ったら――戻ってしまったら、それはもう取り返しのつかない場所へ行ってしまうようで。
――今なら、まだ。
俺は未練たらしく、プレイルームの真向かい、レントゲン室の外にあるソファに座った。
プレイルームの穏やかな黄色いドアが、人気のない廊下で唯一息づいている。
今ならまだ、間に合う。
シェリーが飛び出して来たら。
行かないでと泣いたら。
「俺は……」
視界がぼやけた。
瞳を動かさないように、呼吸をそばめてその波が過ぎ去るのを待つ。
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