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シェリーに嫌われようと言ったのは俺。
だから突き放した。
それでもこうして待っているのは自分でも馬鹿らしくて。だけど悲しいほど切実に、俺はシェリーを待っていた。
いつもみたいに、いつかみたいに。
俺が嫌いだって言ったって、あっけらかんと笑ってついてくるんじゃないかって。
それでももし本当にあいつが来たら。もっと傷つけてでも嫌わせる。だから、出て来て欲しくない気持ちもあった。
矛盾する気持ちに、押し潰されるように笑った。
このまま――ひっそりと消えたい。あいつの人生から。
あいつの未来を潰したくない。
あいつの笑顔を曇らせたくない。
馬鹿みたいにニコニコ笑って、苦労なんて知らずに育てばいいんだ。あの夫婦の元で。
こんな……悪党になる幼なじみなんて忘れて。
俺は頭を抱えた。紺のスリッパを見つめる。背中はパリパリと悲鳴を上げたが、いっそ張り裂けてしまえとさえ思った。
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