―12歳 扉の向こう―

4/14

43人が本棚に入れています
本棚に追加
/242ページ
シェリーに嫌われようと言ったのは俺。 だから突き放した。 それでもこうして待っているのは自分でも馬鹿らしくて。だけど悲しいほど切実に、俺はシェリーを待っていた。 いつもみたいに、いつかみたいに。 俺が嫌いだって言ったって、あっけらかんと笑ってついてくるんじゃないかって。 それでももし本当にあいつが来たら。もっと傷つけてでも嫌わせる。だから、出て来て欲しくない気持ちもあった。 矛盾する気持ちに、押し潰されるように笑った。 このまま――ひっそりと消えたい。あいつの人生から。 あいつの未来を潰したくない。 あいつの笑顔を曇らせたくない。 馬鹿みたいにニコニコ笑って、苦労なんて知らずに育てばいいんだ。あの夫婦の元で。 こんな……悪党になる幼なじみなんて忘れて。 俺は頭を抱えた。紺のスリッパを見つめる。背中はパリパリと悲鳴を上げたが、いっそ張り裂けてしまえとさえ思った。
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加