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―エピソード@アレックス―
固く体を強ばらせたまま。シェリーの嗚咽を背にドアを開けた。
泣き出したかった。
俺も泣いて泣いて、シェリーを抱き締めて、行かないでくれって叫びたかった。
言いたい言葉はたくさんあった。
お前が無事で良かった。俺は大丈夫だから心配すんな。泣き虫シェリー。もう添い寝はしてやれないんだぞ。いじめっ子からも守ってやれない。木から怖くて降りられなくても、礼拝堂の探検をしたくても、ピクニックに行きたくても、俺はもう――お前のそばにはいられないんだ。なあ、シェリー、大好きなんだ。お前の笑顔が大好きなんだ。だから笑ってくれよ。泣くなよ。泣くなよ。泣くなよ――元気でな、幸運を、そんなさよならさえ言えない。
いや、もっと言いたいことがある。あるんだ。
忘れないでくれって、言わせてくれよ。
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