26人が本棚に入れています
本棚に追加
「ハァっ」
華音は竹箒を動かす手を止め、かじかんだ赤い指に息を吹きかけた。
白い息が指をかすめ、そして空気に溶けていく。
ぼんやりと、大して暖かくならなかった手をこすり合わせながらそれを見つめて、そっと誰にともなく呟いた。
「12月…もう、冬ですね…」
華音は秋に生まれた。
実際はもう少し前だったのだが、それ以前の記憶はないため、秋と言って差し支えないだろう。
「初めての、冬…」
データとしてしか知らない冬を、初めて体験する。
ふふっ、華音は笑った。
「凜音と出会ってからは、初めてだらけですね」
私のマスター。
大切な人。
「空気が締まっている感じが、嫌いではありませんが…寒いですね」
最初のコメントを投稿しよう!