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「それはどういうことなのかな?」
――R接骨院地下三階。
僅かに眉間を狭めた『木原』一族の一人である初老の研究者は、落ち着き払った様子とは裏腹に内心では多少なりとも焦りを感じていた。
一般的なそれと比較すれば微々たるものではあるが。
「別任務のB班からの報告では警備員がこの学区内を巡回しているようです。怪しいと踏んだのでしょうか、地域住民に聴き込みをしているようです」
「ふむ…」
(嗅ぎ付けられるのも時間の問題かね。しかし場所を移すにしても、証拠を隠蔽する時間も残されてはおるまい。となれば、ここを離れずに防衛及び機密レベルの強化が適切だが、申請が億劫であるし今は人材が不足しているからなあ。…だが、)
幻生は、色々な意味で優秀な頭脳をフル回転させると、一人の少年の顔を思い出す。
そして、気味の悪い笑みを浮かべながら部下に指示する。
「仕方がない、“アレ”の準備が必要だ。早急に用意しておきなさい」
「了解致しました」
部下の男は承ると同時に、さらに別の班に幻生の指示を機械的に伝える。
「連中に私を止めることなど出来んさ。実験は無事成功したのだから。なあ、“火坂”君?」
幻生の問い掛けは返されることなく虚空へと消えた。
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