この小説には序章はない!!

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 遠ざかった俺を余所に、西斑は言葉を続けようとする。  恐らく、そのキャラの詳しい説明をするんだろう。以前もそうだったし。 「いいか、間違えるなよ?タイトルは"少女"と書いて"おとめ"だ。  そして霧葉ちゃんの名字は水に泉で、"みなもと"だからな!  これ期末テストに出るからな」  んなもん、出るか。  俺は心の中で、呆れたように呟く。  ふと教室内へ軽く目を向けると、やはりクラスメイト等は、また始まったと言わんばかりの呆れ顔が多く見えた。  うん、その反応は正しい。そして君達は幸運だ。なんせ、西斑の対象は俺だけなんだからな。  そんなことを思い、人知れず小さな溜め息を吐く俺と数人のクラスメイトの目が合った。  俺は苦笑しながら、片手を前に立て謝るようにする。  それを見たクラスメイトも俺同様に苦笑し、両手を合せ口パクで"ごめんなさい"と言っていた。  ちなみにそうしていたのは、クラス委員長の水前寺 智花だ。  ごめんなさいと言ったのは恐らくだが、助けられなくてごめんなさい、という意味だ。  まあ実際はその頭に"いいえ"が入っているのだろう。  なんせ俺が"迷惑かけて"すまん、と謝ったことに対して返して来たことだからな。  何だかんだで、俺と水前寺のこのやり取りは極当たり前になっている。  だから互いに、多く語らなくても言いたいことがわかるのだ。  勿論、それは水前寺自身も以前に言っていた事だ。 .
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