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部屋を出て,階段を駆けおりる。
「母さん!急いでご飯!」
「おはようキク乃。それより,顔を洗って!」
肩まである茶髪を揺らしながら,
キク乃を窘(たしな)めたのは母:雪白(ゆきしろ)。
「...朝から騒がしいなキク乃。」
「あれ?父さん。今日は休み?」
「お前,今日は卒業式だろう?」
あきれた様にため息をつく。
新聞を開いているのは父:久士(ヒサシ)。
「あっ,そうだった。ってか,急がなきゃ!!」
キク乃が洗面所へと消えると,雪白と久士はお互いに視線を合わせクスリと笑う。
しばらくして,久士は雪白に尋ねる。
「そういえば雪白。朝っぱらから電話があったようだが?」
「さっきの?さっきの電話は学校からよ。
”卒業式は延期”になって,3時間目までの授業を行うそうよ?」
「.....。」
話を聞いた久士は,何も言えなくなって口をポカーンと開ける。
...忘れていた。雪白は「極度の天然」だったのを。
「行ってらっしゃーい!」
不機嫌顔のキク乃を送り出した
雪白は朝の片付けに入った。
久士は,顔に新聞を被せて寝息を立てる。
そんな鈴家のリビングには
つけっぱなしのテレビでニュースを流していた。
『…昨日,3日前に高崎銀行で強盗をした犯人の1人が逮捕されました。警察によると犯人は,ある少女の説得によって自首したということです。』
-これは,探偵キクの手柄でしょうか-
「クシュ!うわぁ風邪かな?」
くしゃみをしながら呟いていたキク乃は,現在全力疾走中である。
空船小学校の校門が閉まるのは,8時30分。
今の時刻は,8時29分。
・・・何故キク乃が現在全力疾走中か,ご理解いただけただろうか?
曲がり角をようやく抜け,開けた一本道が見えた。
…その先では,今校門を閉めている所だ!
キク乃に気付いたのか,閉め始めている教師がこちらを向く。
「ふん!」
「うわっ!あの先生,わかってて閉めてくんだけどっ!!」
必死に叫ぶが門は無情にも閉じてしまう!
教師も学校の中へ入って行った。
呆然としながら,門の前で腕を組む。
高くそびえる門と塀。
塀から飛び出した桜の木。
「んじゃ,木をつたって中に入ろう!!」
誰もが思いついてもしない行動を実行する事にしたキク乃。
...キク乃は慣れた手つきで登り,学校の敷地内に入った。
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