喫茶

10/18
前へ
/44ページ
次へ
「コーヒー飲めますか?」 振り向くと、カウンターに戻った店員さんがカチャカチャと音を立てながら聞いてくるところだった。 コーヒー、まあ飲めなくはない。ただ、家で飲むコーヒーはミルクだの砂糖だのたっぷりの、ほぼカフェオレに近い感じのものだから…… 「……苦いのは、あんまり」 そんな甘ったるいコーヒーは世間で言う『コーヒーが飲める人』に当てはまらない気がして、そんな曖昧な答えになってしまった。 「そうですか。ココアはどうですか?」 「あ、好きです」 反射的に元気に答えてしまい、思わずタオルを頭から被る。 私ってば子どもじゃないんだから…… 店員さんは気にしているのかいないのか、クスッと笑って「そうですか」と一言。 そこで会話は途切れて、再び店内は流れる音楽だけが響く。 髪はだいぶ乾いてきたため、タオルを肩に掛けてから鞄をとった。 道路側に鞄を持っていたせいで、もろに水がかかってしまっていた。 ……中身無事かな? 小学校の頃はよく雨のせいで教科書のページがふやけたりくっついてパリパリになってしまったり、そんなんばっかだった。 ……あの頃は律儀に教科書持って帰ってたからな。 今となっては鞄は随分軽くなったもの。教科書なんて良くて1、2冊程度しか入っていない。 ただ、提出プリントに被害が出てしまった場合、相当困ったことになる。 男子はよくしわくちゃの変わり果てたプリントを提出したりしてるけど、一応女子である私はなるべく綺麗なまま提出したい気持ちがある。 世の中の女の子、共感してくれる人いないかな。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加