喫茶

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バシャッ 別に馬車が通ったわけじゃない。 私の横を通ったのは小型トラック。 どうということはない。 ただトラックが私のすぐ横を走っていって、昨日雨が一日降り続いてて、丁度そこに大きな水溜まりができてて、トラックのタイヤが見事その中を通過して すぐ横にいた私に水しぶきが飛んだってだけの話。 その水溜まりの規模がやや大きかったのと、トラックが制限速度軽く無視して通過してったのがポイントだったってだけ。 そんな要因がうまい具合に重なり、結果的に私が全身から水を滴らせることになったのは、まあ……日頃の行いが良いのか悪いのか。 でもトラックはもう遥か彼方だし、その辺の電柱に当たり散らしても私に染み込む水分が即座に蒸発するわけでもないので とりあえず歩いた方が乾きも早いだろうという結論にたどり着いた。 「……普通の道通ればよかったのかなー」 誰に言うわけでもなく零れた呟き。 いや、決してこの道が異常な道なわけではなく、ただ何となく、今日はいつもと違う道で帰ろうかななんて思って、テキトーに角を曲がった矢先にこれだ。 普段はそんなこと考えもしないのに、よりによってどうして今日ひらめいてしまったんだろう。 これが昨日だったら、あのトラックは通らなかっただろうし、明日だったら水溜まりは蒸発してあそこには無かったかもしれない。 更に言えば、もうひとつ先の角を曲がればこんな潤わずに済んだかもしれない。
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