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今日であることに何か意味があったのか。
この道を選んだことに意味があったのか。
……あったとしても、ろくな意味じゃない。
まあ唯一の救いは人通りが少ないことかな。
これが大衆の前だったら水と共に地味に痛い視線も浴びて、更に冷ややかな状態になったかもしれない。
ニャア
ポタポタする制服のスカートを搾っていると、前を通った小さな通行人。いや、猫。
真っ黒な猫。
首輪は無いから、野良?
……黒猫が前を横切ると不吉なことが起きると聞いたことがある。
なんて、ジメジメしてると考えまでジメジメしてきてよくないな。
大体猫は悪くない。ただ、生まれたら偶然黒毛だったってだけ。
なのに人間に好き勝手言われて……気の毒な。
「君もいろいろ大変だね」
「……」
黒猫は私をジッと見つめ、何も言わずに歩いて行ってしまった。
……見た目大変なことになってる私に言われたくないってか。
なんか軽く猫にまで見放された感満載だけど、まあ仕方ない。
もうさっさと帰ろう。
ただ、家に帰るには一度大通りに出なければいけない。
……裏通りから妙に湿気の多い女子高生が出てきたら、驚くよね。今日、カラッといい天気だし。
ニャア
さっきも聞いた声に顔を上げると、数メートル先の角の前で立ち止まっている黒猫。
なんだろう。凄く見つめられている気がする。
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