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生まれも育ちもこの地区だけど、猫を追い掛けるうちに見たことない風景が映り始めた。
初めて来る道。
……まさか隣町まで入っちゃってるなんてこと、ないよね?
帰り道が若干不安になってくるけど、猫さんは相変わらず振り向きながら歩いてくれるので、今更引き返す気にもなれず……
「…………あれ?」
一瞬目を離した隙
私の前を歩いていた黒猫の姿は見えなくなっていた。
……ここまで連れてきておいて、放置ですか…………。
まあ私が勝手について来ただけとも言えるんだけど。
仕方なく引き返そうと、Uターンした時
カランカラン
軽い音。
妙に耳に残る音に引き寄せられるように、見知らぬ風景の中に更に足を進めた。
そしてすぐ先の角を曲がり、足が止まる。
目の前に現れたのは、こじんまりとしたお店の様な建物。
壁は白っぽく、さほど汚れてはいない外見。古いとは感じないけど、新築だとも感じられない。
『OPEN』と書かれたプレートが掛かった扉の前には『Menu』と書かれた立て看板。
珈琲、紅茶等の飲み物と軽食になりそうなものがいくつか。
……喫茶店、カフェ…なのかな?
まるでお人形さんの世界に出てきそうな外見の建物が、路地裏にぽつんと佇む。
明らかに日本の住宅地のすぐ傍にあるような物ではない気がする。
でも妙に周囲に馴染んでいて、気にしていないと通り過ぎてしまいそうな程。
でも一度気になれば、やはり入ってみたくなる。
場所的に人通りが多いわけではないし、隠れ家スポット的なお店なんだろうか。
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