喫茶

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暫く眺めていたが、私の趣味を見事につくお店だという感想に至った。 こういうヨーロッパの街中にありそうなデザイン、好きなんだよなあ……可愛くて。 気付けば私は扉に手を掛けていた。 ゆっくり引けば、カランカランと、あの軽い音。 そして、ふわりと 香るコーヒーの匂い。 中はテーブルが幾つかと、カウンター席。 蛍光灯の真っ白いライトとは違う、少しオレンジがかったようなライトから、ほんのり温かみを感じる。 控え目に音楽が流れているため、静まり返っているわけではないけど、会話は聞こえない。 場所が場所だけに、お客さんはそこまで来ないのかな? とりあえず、見た感じ客は誰もいない。 というか、店員すら見当たらない。 と、思ったらカウンターの向こう側からひょっこり姿を現した人が一人。 私を見つけると、人の良さそうな笑顔で「いらっしゃい」と言われた。 若いお兄さんのようだけど、他に店員さんいないのかな。 なんて考えてると、続けて声を掛けられた。 そして、すっかり忘れていた現実が再び蘇る。 「……あれ、外は雨ですか?」 「……すみません、タオル貸していただけますか」 お店でタオルねだるなんて、人生初の試みでした。 .
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