喫茶

9/18
前へ
/44ページ
次へ
「僕が不思議ですか?」 「へっ?あ、いや……すみません」 ジーッと見ていたのがばれていたらしく、それでも嫌な顔一つせず、微笑まれた。 ここで謝ったら本当に不思議に思ってるみたいじゃん……まあ不思議な人だけど。 髪を拭くついでに掛けていた眼鏡も拭く。 初めて眼鏡を掛けた時、目立つのがどうしても嫌で、なるべく目立たない物を……と言って縁無しにしてもらった眼鏡。 ボーッとしていると足音が聞こえて、慌てて眼鏡をかけ直した。 しかし店員さんは私に近付いたわけではなく、そのままテーブルを通り過ぎ、綺麗に磨かれた窓を幾つか開けた。 戻ってくる時に目が合い 「風を通した方が、早く乾くでしょうから」 そうして反対側の窓を開けにいった。 両側を開けると風通しがよくなり、ふわりと風が入って私の湿った髪を撫でた。 背中まで伸びた重たいロング。 真っ黒だから余計重たいというか見た目暗い。 髪が短ければすぐ乾くのに……なんて思ったけど、切るつもりはないんだから、どうしようもない。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加