現実となる不安

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「奥様、今すぐお医者様をお呼びしますからね!!」 内線を聞いて飛んで来たメイドの茜さんが、体温計を見て慌てて受話器を取る。 「え!?ちょ…待って茜さん!」 私も大慌てでそれを止め受話器を奪い取った。 「奥様!インフルエンザだったらどうするんです?」 茜さんの悲しそうな目が、心から心配なんだと訴えかけてくる。 うるうるとした瞳に見つめられて敵うはずもない。 「……お医者様を呼ばなくても、ちゃんと、自分で行くから。ね?」 本当は行きたくないが、こう言わざるを得なかった。 茜さんを呼んだのは家にある解熱剤が欲しかったからなのだが、結局病院に行く羽目になってしまった。 本当は恐いけど、この際きちんと調べてもらう方が良いかもしれない。 不安に締め付けられそうな胸を抑え、ボーッとする頭を抱えながら病院に行く支度をした。 病院に付き添うと言って聞かない茜さんをなんとか説得し、運転手付きの車に乗る。 熱のせいで視界はぼやけ体もだるかった。 背もたれに体をぐったりと預けていたら、微かに携帯の着信音が聞こえてくる。
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