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「……はい。」
のろのろとカバンから携帯を出し、相手の名前も確かめずに通話ボタンを押してしまった。
しかし今の私にとってはそんな事などどうでも良い。
ただただだるいのだから。
『遊里?俺だ。』
「ああ…海斗?どうしたの?」
海斗からの電話だと言うのに、驚く余裕もなく気の抜けた言葉を返す。
『…だるそうだな。茜から電話をもらったんだ。泣きながらだったからいまいち良く分からなかったが、39℃あるお前が一人で病院に行ってしまった、という所だけは聞き取れた。……大丈夫か?』
茜さん泣いてたのか…。
一人で行けるから、と私が言ったのがショックだったのだろう。
「う~ん、大丈夫だよ、そんな大病じゃないんだから。…多分。」
『多分?俺も今から病院に…』
私が付け加えた言葉が海斗の不安を煽ってしまったらしい。
そう言い出した海斗の声を慌てて遮り、一人ぶんぶんと首を横に振った。
…電話なんだから海斗に見えるはずもないのに。
「いやいや!だ、大丈夫!!そんな大事にしないでよ~逆に私が不安になっちゃうよっ!」
『しかし………心配なんだ遊里。分かるだろう…?』
耳をくすぐる低い声。
危うく頷いてしまう所だった。
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