現実となる不安

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「なあ、さっきの患者、見た感じかなりヤバイよな。」 「ああ!あのなんとかっていう会社の社長夫人だろ?」 ピクッ。 社長夫人という単語に、進めていた足を止める。 彼らからは私が見えないのか、全く私に気づく様子はなかった。 社長夫人って…私の事…? 総合病院とはいえ、同じ日に同じような時間にCTを撮る社長夫人が2人もいるとは考えにくい。 急にドクドクと胸の鼓動が早まり、こっそりと耳を傾けた。 「診察した医者の話しでは…」 そこで言葉を区切り、男性が声を潜める。 「子宮癌だろうって、それも末期の。」 微かに聞こえてきた単語に、頭の中は真っ白になった。 理解出来ない。 頭が追いつかない。 ただ冷や汗が額を濡らす。 震え出した指先をぎゅっと握りしめ、その場にへたり込んだ。 「あの感じだと…余命半年じゃないかって言ってたな…可哀想に。子供も居るらしいし…。」 余命…半年………? 次々と聞こえてくる言葉に、どんどん呼吸が苦しくなってくる。 子宮癌…? 余命半年? 私が――――――? 体中が小刻みに震え出し、自分自身を抱きしめるように腕を回した。
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