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「……?」
苦しかった呼吸が、途端におさまっていく。
涙で歪んだ視界で自分の手を見ると、大きな手が私の手を強く握っていた。
この手は…。
「海斗…?」
手の先を追って、その愛しい顔を視界に捉える。
「遊里…?大丈夫か?何故こんなに震えて…」
低く優しい声が体に染み渡る。
「何で…」
「大平が、珍しく慌てた声で電話をよこした。…病院では何と言われたんだ?体が冷た過ぎる。」
大平さんからの電話で、帰って来てくれたの…?
私の…ために…?
流れ落ちる私の涙を指で拭い、温かい手が汗で張り付いた私の髪を撫でる。
乱れていた気持ちも、不安や恐怖も、海斗が側にいるだけでスッと消え失せた。
髪を撫でる手を取り、その手をぎゅっと握りしめた。
「…インフルエンザではないって…。注射と点滴をしてきたの。…寒い。海斗、寒くてたまらないの…。」
「遊里?」
動揺した声で名前を呼びながらも、海斗がベッドに上がり布団に入って来る。
そのまま私を抱きしめ、聞いた。
「インフルエンザじゃないならなんなんだ?風邪か?…でもただの風邪だとは思えないが…。」
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