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「…」
何て答えたら言いのだろう。
そのままを、正直に?
子宮癌だと。
あと半年しか生きられないんだと。
海斗に言うの―――?
『死ぬ時は一緒だ』
『お前が居なくなったら、俺は生きていけない』
いつか、海斗が言っていた言葉が頭を過る。
途端に自分の死への恐怖とは違う恐怖が体を支配した。
私が死ぬと分かったら、海斗はどうするんだろう。
私が死んだら、海斗はどうなるんだろう。
―――死ぬかもしれない。
私を追って。
死にはしなくても、生きる気力を失ってしまうのではないか。
あの優しい笑顔が消えるかもしれない。
温かい瞳が色を映さなくなるかもしれない。
だって……だってもし私が逆の立場だったら…きっとそうなる。
海斗が死んだら、きっと私も私ではいられなくなる。
狂おしい程に愛しているから。
海斗の私への愛がどれほど深いか知っている。
だからこそ、きっと………。
「遊里?」
いつまでも答えない私を不審に思ったのか、海斗が私の顔を覗き込む。
その瞬間、考えるより先に笑顔を作っていた。
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