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「ママ、もう大丈夫なの?」
駆け足で里海がベッドに来て、私の顔を見上げる。
続いて遊真と斗真も部屋に入って来た。
「母さん、病院行ったんだって?父さんが風邪だって言ってたから安心したよ。」
「…顔色悪い。心配させんなよ。」
遊真の手には果物の乗ったかごが握られていて、それをチェストの上に置くとポケットから体温計を取り出した。
「みんな心配させてごめんね。もう大丈夫なの。ありがとう。」
言いながら、目頭が熱くなる。
遊真が差し出す体温計を口にくわえ、里海の頭を撫でた。
まだ不安そうな里海に、微笑んでやるのが精一杯だった。
風邪だって、嘘をつくのが辛い。
みんなを騙している事が辛い。
でも…本当の事を口にする方がもっと辛くて怖かった。
みんなはどんな顔をするだろう。
どんな言葉を言うだろう。
どれほどに哀しむのだろう。
それを考えただけで心が粉々に砕けてしまいそうだ。
それでも話した方が良いに決まってる。
そんなこと分かってる。
分かってるのに…。
「っ…」
我慢出来ず泣き出してしまいそうで、丁度測り終わった体温計を遊真に差し出し布団に潜った。
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