手紙

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コトッ…。 書き終えたと同時に、万年筆を机の上に置く。 そして両手で顔を覆い天井を見上げた。 ぐちゃぐちゃに濡れた頬が冷たい。 指の隙間から流れる涙が髪の毛を濡らす。 全然、書ききれなかった。 こんな紙の上じゃ、私の海斗への想いの全てを書く事なんか出来なかった。 何度も何度も海斗の顔が浮かび、その度海斗の顔が悲しみに歪んでいく。 書きながら…辛くて悲しくてたまらなかった。 きっと海斗はこれ以上の悲しみを背負うのだ。 そう思ったらやりきれなくて、書く手は何度も止まった。 でも…何度も何度も書き直して、やっと見られる字が書けた…。 声を殺しすすり泣いていたら、突然書斎のドアがノックされた。 念のため鍵を閉めてあったので、「はい」とだけ返し相手の言葉を待つ。 「茜です。良かった…奥様こちらにいらしたんですね。奥様のお兄様がいらっしゃっております。」 「え!?」 びっくりして、椅子から勢い良く立ち上がった。 慌てて涙を拭きドアを開ける。 「お兄ちゃんが?」 私が問いかけた茜さんの後ろで、お兄ちゃんがにっこりと笑っていた。
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