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息を切らして書斎の前まで来ると、ドアが開いていた。
緊張しつつ中を覗き込み、息を詰める。
海斗は、書斎のデスクの前に居た。
立ち尽くしたまま、何かに視線を落としている。
「……!」
海斗が手に持っていたのは見慣れた便箋。
私が書いた手紙だった。
ドアの枠を掴んでいた手が震える。
どうしよう。
どうしよう…全てが最悪の形でバレてしまった!
頭の中がパニックになり、へなへなとその場に座り込む。
すると突然海斗が口を開いた。
「………ここに書いてある事は、本当か?」
低く、感情が読み取れない声。
息を殺して来たのに、私がここにいる事に気づいていたなんて。
動揺のあまり黙っていたら、海斗がもう一度ゆっくりと繰り返す。
「ここに書いてある事は、本当なのか?」
海斗はこちらに背を向ける形で立っているので、表情が読み取れなかった。
私は張り付く喉で必死に口を開く。
「…はい。」
掠れたか細い声しか出なかった。
しかし海斗は聞き取ってくれたらしく、質問を変えてくる。
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