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「…病名は?」
「……子宮…癌…」
「助かる手立てはないのか。」
「……手遅れだって…あと、半年しか…生きられないって……」
反射的に答えながら、私は驚いていた。
海斗は、もっと泣いて混乱すると思ってた。
でも、とても落ち着いているように見える。
冷静に見えるのだ。
「この前病院に行った時に分かったんだな。何故すぐに言わなかったんだ。」
「……明日、もう一度病院に行くから…そしたら話そうと…」
私が答えると、海斗が深いため息をついて手紙をデスクに置いた。
そして椅子に腰をかける。
そのまま頭を抱え動かなくなった海斗に、不安になり声をかけた。
「海斗…」
しかし応答はない。
おずおずと立ち上がり、そっとデスクに歩み寄った。
そして近くまで来た時。
私はようやく気付いたのだ。
海斗の肩が揺れている事に。
「海斗……っ…」
落ち着いてる?
冷静?
私は何を考えていたのだろう。
落ち着けるわけなんかない。
冷静に居られたわけでもない。
必死に堪えていただけだったのに。
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