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だから、私は「やはり冷えていたのだろう」と決めつけた。
でも、夕食を食べた後、その痛みは再びやってきたのだ。
翌日も、その翌日もそして昨日も、痛みと張りは私を悩ませ続けた。
痛みは次第に強くなり、張りを感じる時間も長くなっていく。
ずっと痛いわけではないから気にしていなかった私も、連日の症状に不安を覚えていった。
そして今日、発熱してしまったのだ。
海斗には「風邪だと思う」と言ったものの、私の心の中では「お腹の痛みと関係あるのではないか」という思いが拭い去れない。
だから不安で仕方なかった。
だから…海斗と離れたくなかった。
しかし、そのいきさつを知らない海斗が妻の風邪で会社を休めるはずもない。
案の定、しばらく手を握った後海斗がそっと立ち上がった。
「遊里、…そろそろ会社に行く。安静にして、無理はするなよ。」
海斗の声が離れがたそうに掠れる。
そっと離される手を引き止めたい気持ちをぐっとこらえ、小さく頷くのが精一杯だった。
「…行ってらっしゃい。気をつけてね?」
「…そんな顔をするな。なるべく早く帰ってくる。」
どんな顔をしてしまっていたのか。
きっと、寂しそうな顔をしてしまったのだろう。
そんな私の額に口付け、海斗は寝室を出ていった。
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